新型コロナウイルス感染症を含めた風邪症状、無症状患者様への考え方

新着情報

2020年7月半ば現在、新型コロナウイルス感染症 第2波の襲来が懸念される状況になりつつあります。

当院の開院時、世間がどのような状況にあるかは見通しが立ちませんが、第1波をコロナウイルス感染症拠点病院はじめ複数の医療機関勤務で経験した院長の経験を踏まえ当院としての姿勢を示しておきたいと思います。

 

少し小難しい話ですので、読むのが大変であれば下の【当院の方針】のみお読みください。

まず、新型コロナウイルス感染症であるか否かを初期症状のみで判断するのは非常に困難、いや不可能です。味覚障害・嗅覚障害を取ってもそれのみで新型コロナウイルス感染症とはいえません。実際、ただの風邪や鼻炎でも味覚障害・嗅覚障害は出ます。なので、

●最近の行動歴 ●接触歴 ●その地域の発生頻度 ●症状の経過

これらを加味し、検査前確率が高いと考えた患者様にPCR検査などを行う必要があります。

巷では『全例PCRをすればよい!』という意見もありますが下図をご覧ください。

現在日本における有病率(人口当たりの感染者数)は潜在感染者数も含めて概ね0.2%程度ではないかと言われています。その中で、PCRの感度(感染者が検査陽性に出る確率)70%・特異度(非感染者が検査陰性に出る確率)99%を入れ込みますと、

例えば10万人全員(有病率を考慮すると感染者は200人)にPCRを行った場合、検査陽性者1138人中実際に感染しているのはたった140人(=陽性的中率12.3%)と全例検査での洗い出しの低さが分かると思います。

逆に、特異度99%を過大評価して『コロナウイルス否定目的にPCRを全例検査すればよい!』と考えたとしましょう。その場合は、検査陰性者98862人中実際はコロナウイルス感染している60人が安心というお墨付きを貰って野に放たれます。

つまり、全員にPCRを行ったところで【感染者を洗い出す検査にも、感染を否定して保証する検査にもならない】のです。

ちなみに、『お隣韓国では全例PCRをやってる!』と報道がありますが、これだけPCRをやって、全人口の何%を検査出来ているか知っていますか?2020年7月9日時点で137万人/5100万人≒2%です。つまり、これだけやっても全てをスクリーニングすることは不可能であるし、精度も高くはなりません。(具体的にどこまで検査前確率を高める方法を取っているのかは調べていませんので、精度が云々を深く議論する気はありませんが、いずれにせよ全例チェックは意味もなければ不可能でもあることをご理解戴けると幸いです。)

このPCRの精度を高めるには、要するに最初に挙げたような項目を加味し、検査前確率を高める過程が必須となります。全例ではなく、疑わしい人をあぶりだして検査前の有病率?(と言えば伝わりやすい?)を上げておくということです。

 

同時に医療機関では、風邪症状の患者様のみならず無症状の患者様がコロナウイルス感染者である可能性もありますので、医療者⇔患者様 患者様⇔患者様の感染防御の視点も必要です。

 

これらのことから

【当院の方針】

●当院では、困難な場合を除き症状の有無に関わらず全患者様にマスクの着用をお願いします。

●『発熱』『咳』など、風邪症状のある方は必ず予め当院に連絡戴くか、症状が強くなければオンライン診療もご利用下さい。来院時は到着した旨をお電話でご一報いただき、受診案内があるまで指示場所で待機してください。他の患者様と接触しないルートでご案内いたします。(新型コロナウイルス感染症リスクに関わらず風邪症状患者様全員が対象です。)

 

新型コロナウイルス感染症は一人ひとりがお互いを思いやることで制御できます。

どうかご理解ご協力をお願い致します。

2020年7月11日 院長 拝